西インド諸島に育つシーアイランドコットンは世界最高の綿と認められています。それは、カリブ海の気候風土が綿にとって最適な環境だからです。綿木の発芽・成長期に恵みの雨が降り、開花時に乾期が訪れるという絶妙な気象サイクルが綿を痛めずに成長を促します。そして綿を優しく育む貿易風…高い平均気温と適切な降水量、日照時間。昼夜の寒暖差が少なく、さらにはサンゴ由来の水捌けの良い最良の土壌が加わり、均一で節の少ない最高の綿を栽培するに必要な条件のすべてが揃っているのが西インド諸島なのです。
繊維の一本一本が長い超長綿であるシーアイランドコットンは、絹のような光沢とカシミヤのような肌触りと形容され、繊維の宝石と言うに相応しい代物です。人の手によってシーアイランドコットンを再現するも、自然の力には到底かないません。本家は天然ゆえに洗濯を繰り返しても性質が損なわれにくく、まさに使うほどに良さが際立つ綿なのです。繊維は長く細いほど、衣類に用いた場合には滑らかさとソフトな仕上がりとなり耐久性にも優れます。また人工では出せない天然のねじれにより、素材にふんわり感と吸湿性が増します。さらに反射度や油分の含有量の高さにより圧倒的な色艶に繋がるのです。
過去、この優れたシーアイランドコットンに魅了された多くの人々が種子を持ち帰り、世界各地で栽培が試みられましたが、そのすべてが失敗に終わりました。16世紀末より生産地が英国領となり栽培が盛んに…そしてシーアイランドコットンが英国王室御用達となってからは、栽培から船積みまで徹底管理され門外不出の“幻の綿”となりました。20世紀に入ると、英国農務省により綿花の品質改良がさらに重ねられ、世界最高の綿質まで高められるのです。そして英国王室だけでなく、英国紳士がステータスシンボルとしてシーアイランドコットンを愛用しました。しかし栽培の難しさなどもあり、いつの日かその姿を消してしまったのです。シーアイランドコットンは、まさに伝説の綿と言えるでしょう。
至高の綿を再び…密かに受け継がれたシーアイランドコットンの種子を用い、アメリカはフロリダで育つような品種改良を施して復活したのが米国産シーアイランドコットンです。一時は害虫被害によって壊滅した米国産ですが、生産者の情熱により再び蘇ったのが、現代のアメリカン・シーアイランドコットンとなります。
(引用:海島綿協会)